ブログ未遂

ブログならもっと真面目に書かれているはずだ。

物語の達人じゃない。文章の達人。

今週のお題「名作」

じゃあこれ。似ッ非イ教室。Kindle版出てたので今買った。

https://www.amazon.co.jp/dp/B08CVFP165

清水義範は電車の中で読んではいけない。笑いを堪えるのは痛みを堪えるより難しい。

この人、「パスティーシュ(模倣)作家」とも言われるが他の作家の文体どころか家電の取扱説明書まで模倣できる。でも別にパスティーシュの達人っていうのではない。単純に文章に関して芸達者だと言える。自らの技術を壮大なストーリーなんかでごまかしたりしない。目の前にあるのは彼の業だけである。1

例えば、「日常を描いているはずなのに何かおかしい」文章はそこら中にある。それこそ有象無象のラノベ村上春樹までが量産している。2それらは大抵、新たな物語への入り口のストーリーになるが、この人が書く場合は何かおかしいけど別に理由はない。そのまま話は終わる。だって、書いてるのは架空の観光ガイドとかなんだから。

なお、古本屋の100円コーナーには清水義範の文庫本があれこれ並んでたりするので、何冊か買っておくと暇潰しと笑いとの闘いになる。何度も何度も電車の中で笑ってしまう失敗を重ねたあと、やっと彼の文章を自由自在に操る業に気付くのだ。

なお、清水義範を読む前に小説の批評におけるクーデルスーム説の知識を得ておくと、よりおいしく召し上がれます。3

この本単体について僕が解説する必要は特にない。作中で他に名作が多数紹介されているので、そちらを読んで欲しい。 実在しないけどな。


  1. 本人も「パスティーシュの技法は身に着けているが、別にそれだけじゃないんだけど・・・」みたいなこと語ってたはず。
  2. 1Q84とかまさにそれよね。あの作品の最大の欠点は「大量の伏線が回収なしで捨てられること」だけじゃない。「残りのページ数が少なくなることから伏線が回収されないことが解ってしまう」ことにあった。読み進めるたび、手の中のページが減っていく度に期待を失う感覚のせいで結末の記憶があいまいになってしまった。
  3. そんなもの実在しないけどな。